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東京高等裁判所 昭和63年(ネ)3427号 判決 1989年5月10日

控訴人 近藤鞆子

右訴訟代理人弁護士 本谷康人

被控訴人 金商又一株式会社

右代表者代表取締役 奥村吉郎

右訴訟代理人弁護士 井出正敏

玉利誠一

被控訴人 東京産業信用金庫

右代表者代表理事 石井傳一郎

右訴訟代理人弁護士 池田清英

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

一  請求原因1項ないし6項の事実及び同7項の事実のうち、控訴人が(三)の建物と共同担保となつている(二)の不動産の第三取得者であることは、当事者間に争いがなく、同11項の事実のうち、被控訴人らが昭和六三年八月一八日の配当期日に出頭して、原判決添付の配当表に対し異議を述べたことは、控訴人において明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

二  ところで、本件のように、共同抵当の目的となつている物上保証人所有の不動産を第三者が取得し、その後債権者に対して被担保債務を弁済した場合には、その第三取得者は、民法五〇一条但書一号、二号及び五号の法文及びその趣旨に照らし、物上保証人に対して、債権者に代位することができないものと解するのが相当である。そして、右不動産の第三取得者は、その不動産に(根)抵当権が設定されていることを知りながらこれを取得するのが通常であつて、債務者又は自らが被担保債務を弁済しない限り抵当権が実行されることを当然に覚悟すべきものであるし、また、右の第三取得者には、代価弁済又は滌除という保護制度を利用する方途も認められている(なお、有償取得の場合には代価の支払いを留保する自由も残されている。)から、右のように解したとしても、第三取得者に不測の損害を与えることにはならないものというべきである。

そうすると、本件においても、控訴人は、物上保証人である訴外近藤圭二に対して、債権者である訴外東京信用保証協会に代位することはできないものといわなければならない。

三  以上によれば、被控訴人らの本訴請求は、その理由があるから、これを認容すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却する

(裁判長裁判官 奥村長生 裁判官 前島勝三 笹村將文)

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